映画鑑賞履歴

  • さざ波(15)
    アンドリュー・ハイ: シャーロット・ランプリング
    71歳になっても、容色いささかも衰えずフェロモン放出の奇跡の女優シャーロット・ランプリング! 最近作のこの作品では、なんとなんと70歳を超える高齢者同士のねっとりしたベッドシーンを難なく演じ切る。おまけにあわや主演女優賞のオスカーまでも取る勢い。今後ともさらなるご活躍を切に祈ります。 (★★★)
  • レヴェナント蘇えりし者(15)
    アレハンドロ・イニャリトゥ: レオナルド・デカプリオ
    文句なしのアカデミー賞の監督賞、主演男優賞そしてなにより撮影賞。堂々たる大作・名作。どうしてもアカデミー賞をとれなかったデカプリオが満を持しての受賞。かつてギルバートグレイプで天才子役として頭角を現し将来を嘱望され続けてきたレオ様の満願成就の戴冠である。 (★★★★★)
  • 殿、利息でござる(16)
    中村義洋: 阿部サダヲ
    「武士の家計簿」以来絶好調の磯田道史先生原作で武士の生活のリアルを追及するオモシロ時代劇。今回も期待にたがわぬおもしろさ。かつては鼻についた阿部サダヲの演技も、顔だけの瑛太の印象も、今や二人とも見事な演技派に変身していて、びっくり!! とりわけ阿部サダヲはどこかの演技賞をとりそう。 (★★★★)
  • あん(15)
    川瀬直美: 樹木希林
    川瀬監督には珍しくとってもわかりやすい映画。この映画の良さは、展開よりもキャスティングの良さ。主演の樹木希林をはじめ永瀬正敏、そして樹木希林の実の孫の内田伽羅に至るまで見事にはまる。思い出すのはまだ20代の当時悠木千帆。TVでNHKの青年の主張の物まねをしたが、そのうまさはただ者でなかったことをなつかしく思い出す。 (★★★★)
  • 博士と彼女のセオリー(14)
    ジェームズ・マーシュ: エディ・レッドメイン
    エディ・レッドメインがホーキング博士を迫真の演技で演じ、アカデミー賞主演男優賞を獲得して、あっという間の名優昇格。障碍者の物まねではない演技とはどんなものかを見せつける。きれいごとではない事実を隠さず表現することによって、感動はいや増さる。 (★★★★)
  • イミテーション・ゲーム(14)
    モルテン・ティルドゥム: ヘネディクト・カンバーバッチ
    第二次世界大戦中、ドイツのエニグマ暗号を解読したアラン・チューリングを描いたノンフィクション。ぬかったことに私はこの事実を知りませんでした。驚くべき偉業を狂気と紙一重でひとりの天才がなしとげます。今や当代の人気者であるホームズ役者のカンバーバッチが畢生の名演技。脚本が見事で、余裕のアカデミー脚本賞。 (★★★★★)
  • バードマン(14)
    アレハンドロ・イニャリトゥ: マイケル・キートン
    アカデミー監督賞をはじめ4部門獲得。メキシコが生んだ鬼才イニャリトゥ監督は今年も「蘇りし者」でアカデミー賞2連覇と乗りに乗っている。見れば見るほど味の出る名作中の名作。「マッドマックス」とともに今年のアカデミー賞は全く新しい表現方法を開拓した2作品を適正に評価した。日本のアカデミー賞とは大変な違いだ。 (★★★★★)
  • セッション(14)
    デミアン・チャゼル: J.K.シモンズ
    昨年のアカデミー賞最優秀助演男優賞。音楽学校の教師によるドラム指導のスパルタ教育を描いていると思いきや、ラストに血も凍るような教師による裏切りが描かれる。私も以前、上司による同様の裏切りに遭遇し、同様に反撃してみたが、映画のような後味の結末には残念ながら至らなかったのを思い出す。 (★★★★)
  • 6歳のボクが、大人になるまで。(14)
    リチャード・リンクレーター: パトリシア・アークエット
    6歳の子供に焦点を当てて、18歳までの12年間を断続的に描き、成年への成長期をリアルに描く。青春時代の真ん中はそれこそ客観的に意識できないものだが、こんなことだったのかと再確認させられる。P.アークエットがアカデミー賞の最優秀助演女優賞をとっているが、肩の力を抜いた自然な演技。 (★★★★★)
  • 薄氷の殺人(14)
    ディアオ・イーナン: リャオ・ファン
    中国・香港合作映画。ベルリン国際映画祭金熊賞、最優秀男優賞。かつて北野武が「その男凶暴につき」でデビューして以来の新鮮な映像表現と鮮烈なリアリティー。中国映画としては張芸謀の「赤いコーリャン」以来の歴史的名作。フィルムは富士でもコダックでもない中国製らしい。それが何よりの脅威か。 (★★★★★)
  • 母と暮らせば(15)
    山田洋次: 吉永小百合
    山田洋次の反戦映画はいつも戦闘シーンが一切出てきません。今回もそうです。くすんだ色調で市井の庶民の生活を丁寧に描きます。井上ひさしの「父と暮らせば」の立派なオマージュ。冒頭の原爆投下シーン、医大の授業中に教室が明るくなりインク壺が溶け、遅れて轟音と暗黒。キノコ雲を出さずに原爆を語る歴史的名シーンだと思います。 (★★★★)
  • スターリングラード(93)
    ヨゼフ・フィルスマイアー: トーマス・クレッチマン
    有名な2001年のアメリカ映画とは同名ですがかなり違います。あれはロシア軍から見たスターリングラード攻防戦。これはドイツ映画でドイツ軍から見た攻防戦。米映画よりリアル。投入されたドイツ軍26万人。生還したもの6千人。我が国のペリリュー島も硫黄島もはるかに上回る地獄の戦闘だったわけです。 (★★★)
  • アウトレイジ ビヨンド(13)
    北野武: ビートたけし

    前作と同様、カンヌを狙い、たけしも結構本気出していたが、今回も空振り。しかし、私はかなり楽しめた。殺し方もずいぶん新手で驚かすし、ヤクザの演技も本物よりヤクザらしい。しかし、いくらなんでも死人が多すぎ。ラストはまだ続編の意欲満々に見えるが、如何なものか? (★★★)
  • 終の信託(12)
    周防正行: 草刈民代

    安楽死問題を真正面から取り扱う周防監督らしい社会派意欲作。苦悩する医師をオールドミス女医役として監督の愛妻草刈民代に超長回しで挑戦させる。草刈民代は正直言って荷が重く、役所広司や浅野忠信、大沢たかおなど脇を思いっきり固めるが無理だった。 (★★★)
  • チョコレートドーナツ(14)
    トラビス・ファイン: アラン・カミング
    ゲイのカップルがダウン症の少年を保護し愛情をそそぐ感動作。世間から二重の差別を受ける3人が、本当の家族について考えさせる注目作。ラストの衝撃に落涙必至。 (★★★★★)

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2005.05.08

新シルクロード展と井上廉(江戸東京博物館)

GWに近所(自転車で片道20分)の江戸東京博物館に行ってきました。
今回の出し物は、現在NHKで放送中の新シルクロードとばっちりタイアップして、~幻の都楼蘭から永遠の都西安へ~と副題を設定して、大変な人気。午後には入場制限になるほどでした。
近年、シルクロードの要衝に当たる中国新彊ウイグル自治区と、その出発地で同時に到着地でもある古都西安では、シルクロードの歴史に関わる新たな発見が相次いでいるそうです。
いろいろと目玉出品があるようでしたが、私が興味をそそられたのは、次の二点に集約できます。

ひとつは、木製ミイラです。立木に腕や足の如き切れ込みを入れて、本物のミイラと同じように、靴下や極彩色の衣服を着せ、帽子をかぶせた上に、さまざまな副葬品と一緒に埋葬したようです。どうせ何年も年を経れば、ミイラか木か、判別がつかなくなります。
興味深いのは、木製のいわば偽ミイラを埋葬した理由です。推測されているのが、遠くで亡くなった親類を、亡骸のない故郷で埋葬するために、ダミーとして使用したとされています。なるほどであります。

二つ目のお薦めは、ダンダンウィルク出土、世界初公開、優れた筆致で柔和な表情の仏画を描いた壁画「如来像」です。
s-DSC00622
この壁画の良さは、あなたの全神経を集中してこの絵を見なければわかりません。よ~く写真をご覧下さい。どうですか?何とも言えない流し目による色気に、魅入られてしまいますよね。
この壁画は、その謎の微笑から別名西域のモナリザとも呼ばれているところです。

さて、大変な人混みの後ろから、辛うじてかいま見ながら「新シルクロード展」を見終わりましたが、時間もちょっと早かったので、次に常設展を見てみることにしました。
ここで、私は偶然の幸運に出くわすことになります。
すなわち、常設展の端で、第二企画展と称して~ある幕臣の幕末・明治~「井上廉と川村帰元」なる展示がなされていたのです。要するに、常設展以外にダブル企画展だったようであります。
しかしながら、こちらの企画展の方は、場所も狭い上に、なによりお客さんがほとんどいないのです。私が見た時は、ガランとした企画展示場にたった三人しかおりませんでした。花のGW中で、一方の新シルクロード展が入場制限までしているまさにその真っ最中に、怖いほどにガランとした展示場でゆっくりと心ゆくまで見ることが出来たわけです。

私がこの第二企画展に興味を持った理由は、井上廉(1846~1913)その人に対する興味からなのです。
井上家は、砲術を職能とするご家人で、父は幕府勘定所の下級役人である普請役をつとめ、イギリス公使館の建設や和宮降嫁の折りの接遇賄いの仕事までやっていますから、何でもありだったようであります。これだけでも、相当おもしろいですよね。要するに、技官と文官と両方の役割をやらされていたのかもしれません。
s-DSC00623
この井上廉さんは、大変な勉強家でかつ筆まめでもあったらしく、普請役になった1856年から亡くなる前年の1913年までの堂々58年間の日記を残しておりまして、主な展示品は、ただひたすらこの膨大な日記だけなのです。
日記と言っても、当時は市販の日記帳など売っていませんから、自分で大きさとしてはA5判程度の大きさの和紙をこよりで綴じて使用しております。書いてある内容は、多くが小遣い帳的な記述だったり、あるいは家族のことについて書かれたものです。
したがって、展示をいくら一生懸命見ていても、全然おもしろくも何ともないわけです。

じゃ、私にとって何がおもしろいのかと申しますと、まず第一に、この井上廉さんは激動の幕末の時点で、毎日漢詩や書写を初め大変な勉強量だったようなのであります。問題は、彼のこのエネルギーが何を目的にどこから発していたのかという事なのです。現代であれば、大学受験とか司法試験とかそれらしい目的がわかるのですが、廉は何を目指していたのか?
ひょっとすると、激動する幕末の不安の中で、闇雲に自分を研鑽することで、心の安寧を得ようとしたのではないかという気がしてきます。

もう一点、私にとって大変興味深いのは(何人かの読者はまたかと言うかも知れませんが)、1868年井上廉22歳の時、幕軍の一員として甲府に従軍し、官軍との戦いに敗れた廉が、江戸に向かって敗走しようとしていたちょうどその時、甲府に向かう途中の新選組すなわちかの甲陽鎮撫隊とすれ違ったと廉は日記に書いております。
22歳の勤勉実直多感な青年井上廉が、敗戦必死の戦にノー天気で勇躍行軍していく新選組を見て、果たして何を感じたでありましょうか?興味は尽きません。

さて、その後の井上廉ですが、明治維新で幕府勘定方の人材の多くは、明治政府に引き継がれたそうですが、廉も会計官勤務となりました。
そして、実務官僚として優れた能力を発揮し、最後は内閣会計局長・恩給局長にまで昇進したそうです。
まっ、そう言う意味で、廉の若い時の無目的の猛勉強は、結実したわけです。

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コメント

 僕も、幕末・明治を生きたひとが何を考えていたのか非常に興味があります。ほんの100年前のできごとなのですね。
 今日は近くの(歩いて40分ほど)のところにある亀甲山古墳(多摩川台公園)まで散歩しました。いつもの散歩コースです。
 4世紀から6世紀ころの古墳群が多摩川左岸の高台に点在しているのですが、古代人が同じ高台から同じ多摩川を見ていたのだと思うと不思議な気持ちになります。

偶然ですが、私も2週間前に、亀甲山古墳に行きました。
コースとしては、まず等々力渓谷を散策した後、多摩川に出て、昼食はベーカリーレストラン「サンマルコ」(ここは掛け値なしにうまい!焼きたてパンが食べ放題!)そして田園調布高級住宅街(非常識なほど急な坂だったなぁ)から亀甲山古墳に至る豪華散歩コースでした。

 東京の東部から東京の南の端まで出張ってくるとは、散歩のテリトリーがずいぶん広いですね。等々力渓谷は僕の定番の散歩コースに入っています。サンマルクもお気に入りの休憩所のひとつです。ちょっと狭いけど、田園調布駅前の神戸屋キッチンもいいですよ。ここもパンが食べ放題。僕の小学校の初めての遠足は亀甲山古墳でした。直接の記憶があるけではなく、記念写真の記憶です。
 多摩川も一時に比べるとずいぶんきれいになりました。
 

江戸博 行ってきました
特集展示 面白かったです
私はむしろ 川村帰元に心惹かれました
いわば負け組が どう明治の時代に順応したのか 
興味深かったです 判官びいきですかね

それにかの川村清雄のお父上とは!
東京国立博物館所蔵の名品「虫干図」は
清雄が心酔していた福沢諭吉の死を悼んで描かれたもので
負け組旗本の息子が 福沢諭吉に傾倒したというのも
時代を感じますねえ

しかも帰元の父 貫流佐衛門は
猿江恩賜公園の前身 猿江御材木蔵の年番だったというし
姪の夫の江原素六は 麻布中学の創立者だし

こうしてみると ちっとも負け組じゃないのかも・・・

えっ?えっ?川村帰元は、そうとうつまらない人っぽかったので、最初からパスしてしまったんですが、そうですか、そんなに興味深い係累がいらっしゃったのですか・・・
そうしてみると、どんな人間にもその歴史にはなにがしかのおもしろみがあるような気がしてきました。
しかし、お父さんが猿江公園の前身の猿江御材木蔵の年番だったとは!
ところで、新選組の原田左之助は、彰義隊の上野戦争に参加して重症を負い、この猿江公園の近くで匿われた後、死亡しています。

64通信のお仲間なんですね。2CでE先生ダッタということは、
授業をさぼって、「赤い砂漠」を観た訳ですか?

チョット、日本ずれしてますが、ヨロシク。
これからも、コメントお願いします。

井上廉に関する新情報を意外なところで入手しました。
現在開催中の江戸東京博物館の「文豪・夏目漱石展」の展示でわかったのですが、夏目漱石と夫人の結婚式の仲人こそ井上廉だそうです。

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読んだぞ!リスト

  • 堀田 善衞: 時間 (岩波現代文庫)

    堀田 善衞: 時間 (岩波現代文庫)
    1936年から37年の南京事件を被害者の立場から描いた小説。「事実のけたはずれのすごみがかえって出来事をストーリー化のあたわぬものとして宙ずりにしてしまう」という逸見庸の解説が的確。ミクロの事実のディテールを克明に追うことによって、被害者の数ごときでは思い及ばぬ真実を読者に理解させる。 (★★★★★)

  • Henry Hazlitt(ヘンリー・ハズリット): 日経BPクラシックス 世界一シンプルな経済学

    Henry Hazlitt(ヘンリー・ハズリット): 日経BPクラシックス 世界一シンプルな経済学
    今売り出しのリベタリアンによる経済学の基本書です。いわば自由市場至上主義のおっそろしくわかりやすい入門書です。わかりやすすぎて読んでいると、眠くなります。昔、そういえばサミュエルソンの基本書を読むときも同様の眠さを感じました。睡眠導入書として一冊いかがでしょうか? (★★★)

  • 司馬 遼太郎: 関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)

    司馬 遼太郎: 関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)
    古今最大の戦闘となった天下分け目の決戦の過程を描かせたら司馬遼太郎の右に出る人はおりません。広大な関ヶ原を舞台に、これ以上ないような複雑な人間関係を生き生きと描写して最後まで一気に読ませます。しかし、私は今さらながら知ったのですが、関ヶ原の戦いって、ギリギリの好勝負だったんですねぇ。 (★★★★★)

  • 鈴木 大拙: 禅 (ちくま文庫)

    鈴木 大拙: 禅 (ちくま文庫)
    難解な禅の神髄そして悟りについて、平易に説得力をもって解説してくれる禅入門の名著。要するに「色即是空、空即是色」の世界を噛んで含んで丁寧に教えてくれる。世界の見え方が変わるほど理解できた気になるのは、大拙師のおかげか、はたまた訳者の工藤澄子氏のおかげなるや? (★★★★★)

  • 岸田 秀: ものぐさ精神分析 (中公文庫)

    岸田 秀: ものぐさ精神分析 (中公文庫)
    「人間は本能の壊れた動物である」から始まってフロイトもユングもぶっ飛ばして、人間存在の幻想性を鍵に、独自の「岸田唯幻論」を展開する。作者自身が自信なさそうで、こちらも今一つ乗り切れない。 (★★★)

  • 辺見 庸: 1★9★3★7(イクミナ)

    辺見 庸: 1★9★3★7(イクミナ)
    いつも戦争を被害者の目から見がちな我々だが、加害者の目から徹底的にリアルに掘り下げる逸見先生。1937年の南京事件を糸口に、現代の安保法制に渾身の怒りをぶつけ咆哮する。しかし、作者が激怒する昭和50年の昭和天皇の記者会見発言、ぬかったことに私は知りませんでした。戦後から現代に至る我が国の総無責任気質の根源はここにあったんですね。 (★★★★)

  • エマニュエル・トッド: 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)

    エマニュエル・トッド: 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
    最近珍しい元気のいいフランス人エマニュエル・トッドが、没落するフランスをほとんどドイツのせいにして悪態をつく。ドイツにとって、東西ドイツ統合もEU統合も千載一遇の濡れ手で粟であることを声高く主張するトッドさん。割り引かなければならないが、説得力あるよ。 (★★★★)

  • 司馬 遼太郎: 世に棲む日日 (文春文庫)

    司馬 遼太郎: 世に棲む日日 (文春文庫)
    どんな幕末オタクでも、苦手とするわかりにくい時期があります。蛤御門から薩長合同の時期の長州の実情です。久坂玄瑞をはじめ手当り次第で死んでいき、誰もがもはや長州は壊滅と確信した瞬間、鬼神とも雷神とも称される高杉晋作の奇跡的怒涛の進撃で情勢逆転。この様子がよくわかる司馬遼太郎の天才的作品です。 (★★★★★)

  • 百田 尚樹: 影法師 (講談社文庫)

    百田 尚樹: 影法師 (講談社文庫)
    本屋大賞作家百田尚樹の小説作法のよくわかる作品。あらかじめ伏線を思い切り撒いておいて、最後にかたっぱしから回収しまくる方式が、読み手としては快感。しかし「永遠の0」の時も思ったのですが、本作の彦四朗といい主人公の潔い高潔さと自己犠牲の姿勢はちょっと非現実と言ってはいけませんかねぇ。 (★★★)

  • 菊地 明: 新選組三番組長 斎藤一の生涯 (新人物文庫)

    菊地 明: 新選組三番組長 斎藤一の生涯 (新人物文庫)
    「寡黙で猟奇的な人切り」なのかはたまた「最後は警官と東京高師の事務官を勤め上げた謹厳実直の人」か?謎の新撰組隊士の全貌が見渡せる。読後、最大のサプライズは、斉藤の妻はなんと!山本八重に勝って会津藩の照姫の祐筆を射止めた高尾(貫地谷しほり)だったということです。 (★★★)

  • 佐野 眞一: 甘粕正彦 乱心の曠野

    佐野 眞一: 甘粕正彦 乱心の曠野
    著者独特の克明な調査を反映して大変な長編ルポルタージュになっており、部分的にディテールに入り込みすぎてわかりにくいところはあるものの、最終盤にかけてドラマチックでとってもおもしろい。甘粕憲兵大尉については吉田喜重の「エロス+虐殺」以来デモーニッシュなイメージが先行してしまいがちな我々の世代にとって、あっと驚く新事実続出で当時が決して異常な世相とは思えない気がしてくる。要するに今でも起こりうるという意味で・・・ (★★★★★)

  • 鹿島 圭介: 警察庁長官を撃った男

    鹿島 圭介: 警察庁長官を撃った男
    あの立花隆大先生が週刊誌で推薦している本。あまりに有名な'65年の国松孝次警察庁長官狙撃事件のノンフィクションルポ。立花先生が珍しく「真犯人はこの老人だ!」と興奮して断言する。著者はフリーのルポライターなれど、文章力弱く読みにくい。しかし、これが事実とすると当時の米村警視総監の責任は非常に重い。 (★★★★)

  • 北野 武: 超思考

    北野 武: 超思考
    私はこれまでのタケシ本をほとんど読んできましたし、読んで損はなかったケースがほとんどでした。今回も幻冬舎が満を持して出版したようですが、さすがに新鮮味が薄れてきました。タケシの少年期における母親の教育を何度か賛美しているが、これはたけちゃんらしくなくて、「タケシ!老いたり!」と思わせます。 (★★★)

  • 渡辺 淳一: 孤舟

    渡辺 淳一: 孤舟
    某一流広告会社をそこそこの役員で退職した高級サラリーマンの定年退職後を「失楽園」の渡辺淳一が意欲的に描いたはずだったのですが・・・この小説は全くひどいですねぇ。この主人公、とにかくウジウジした思いっきり情けないおっさんです。あの「失楽園」で過激に世間を挑発した同じ作者とは到底思えません。 (★)

  • 町田 康: 告白 (中公文庫)

    町田 康: 告白 (中公文庫)
    明治26年に実際に起きた大阪府南東部赤阪水分の11人斬殺事件を題材としたロックンローラーで作家の町田康の傑作。全編独特のロック調とも言うべき文体で、かつ河内音頭の熱と意気を感じさせる。事件後わずか1ヶ月で河内音頭として大ヒット。「男持つなら熊太郎弥五郎、十人殺して名を残す」と歌っている。 (★★★★)

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