映画鑑賞履歴

  • わたしは、ダニエル・ブレイク
    ケン・ローチ: デイヴ・ジョーンズ
    イギリスの名匠ケン・ローチ監督が、失業した中年男性の苦境をリアルに描写。カンヌ国際映画祭、パルムドール賞。失業手当行政の矛盾はどこの国でも共通と思わせる。 (★★★★★)
  • ファントム・スレッド(18)
    ポールTアンダーソン: ダニエル・デイ・ルイス
    本年度アカデミー賞衣装デザイン賞受賞!! ダニエル・デイ・ルイス引退作!! ラスト30分の展開に92%が驚愕!! 等々にぎにぎしい宣伝文句につられてあわてて見に行きましたが、それほどでもありません。しかし、前半は仕立て屋の採寸シーンだけで尋常ならざる緊迫感を感じさせる。なれど、私はラスト30分に驚愕しない8%でした。 (★★★★)
  • クー嶺街少年殺人事件
    エドワード・ヤン: チャン・チェン
    夭折した台湾ニューシネマの旗手エドワード・ヤン監督の衝撃作。東京国際映画祭で審査員特別賞を獲得するなど一部に熱狂的に支持され、BBCの「21世紀に残したい映画100本」にも選出されているが、私にはラストの展開がどうしても納得できなかった。 (★★★★)
  • さざ波(15)
    アンドリュー・ハイ: シャーロット・ランプリング
    71歳になっても、容色いささかも衰えずフェロモン放出の奇跡の女優シャーロット・ランプリング! 最近作のこの作品では、なんとなんと70歳を超える高齢者同士のねっとりしたベッドシーンを難なく演じ切る。おまけにあわや主演女優賞のオスカーまでも取る勢い。今後ともさらなるご活躍を切に祈ります。 (★★★)
  • レヴェナント蘇えりし者(15)
    アレハンドロ・イニャリトゥ: レオナルド・デカプリオ
    文句なしのアカデミー賞の監督賞、主演男優賞そしてなにより撮影賞。堂々たる大作・名作。どうしてもアカデミー賞をとれなかったデカプリオが満を持しての受賞。かつてギルバートグレイプで天才子役として頭角を現し将来を嘱望され続けてきたレオ様の満願成就の戴冠である。 (★★★★★)
  • 殿、利息でござる(16)
    中村義洋: 阿部サダヲ
    「武士の家計簿」以来絶好調の磯田道史先生原作で武士の生活のリアルを追及するオモシロ時代劇。今回も期待にたがわぬおもしろさ。かつては鼻についた阿部サダヲの演技も、顔だけの瑛太の印象も、今や二人とも見事な演技派に変身していて、びっくり!! とりわけ阿部サダヲはどこかの演技賞をとりそう。 (★★★★)
  • あん(15)
    川瀬直美: 樹木希林
    川瀬監督には珍しくとってもわかりやすい映画。この映画の良さは、展開よりもキャスティングの良さ。主演の樹木希林をはじめ永瀬正敏、そして樹木希林の実の孫の内田伽羅に至るまで見事にはまる。思い出すのはまだ20代の当時悠木千帆。TVでNHKの青年の主張の物まねをしたが、そのうまさはただ者でなかったことをなつかしく思い出す。 (★★★★)
  • 博士と彼女のセオリー(14)
    ジェームズ・マーシュ: エディ・レッドメイン
    エディ・レッドメインがホーキング博士を迫真の演技で演じ、アカデミー賞主演男優賞を獲得して、あっという間の名優昇格。障碍者の物まねではない演技とはどんなものかを見せつける。きれいごとではない事実を隠さず表現することによって、感動はいや増さる。 (★★★★)
  • イミテーション・ゲーム(14)
    モルテン・ティルドゥム: ヘネディクト・カンバーバッチ
    第二次世界大戦中、ドイツのエニグマ暗号を解読したアラン・チューリングを描いたノンフィクション。ぬかったことに私はこの事実を知りませんでした。驚くべき偉業を狂気と紙一重でひとりの天才がなしとげます。今や当代の人気者であるホームズ役者のカンバーバッチが畢生の名演技。脚本が見事で、余裕のアカデミー脚本賞。 (★★★★★)
  • バードマン(14)
    アレハンドロ・イニャリトゥ: マイケル・キートン
    アカデミー監督賞をはじめ4部門獲得。メキシコが生んだ鬼才イニャリトゥ監督は今年も「蘇りし者」でアカデミー賞2連覇と乗りに乗っている。見れば見るほど味の出る名作中の名作。「マッドマックス」とともに今年のアカデミー賞は全く新しい表現方法を開拓した2作品を適正に評価した。日本のアカデミー賞とは大変な違いだ。 (★★★★★)
  • セッション(14)
    デミアン・チャゼル: J.K.シモンズ
    昨年のアカデミー賞最優秀助演男優賞。音楽学校の教師によるドラム指導のスパルタ教育を描いていると思いきや、ラストに血も凍るような教師による裏切りが描かれる。私も以前、上司による同様の裏切りに遭遇し、同様に反撃してみたが、映画のような後味の結末には残念ながら至らなかったのを思い出す。 (★★★★)
  • 6歳のボクが、大人になるまで。(14)
    リチャード・リンクレーター: パトリシア・アークエット
    6歳の子供に焦点を当てて、18歳までの12年間を断続的に描き、成年への成長期をリアルに描く。青春時代の真ん中はそれこそ客観的に意識できないものだが、こんなことだったのかと再確認させられる。P.アークエットがアカデミー賞の最優秀助演女優賞をとっているが、肩の力を抜いた自然な演技。 (★★★★★)
  • 薄氷の殺人(14)
    ディアオ・イーナン: リャオ・ファン
    中国・香港合作映画。ベルリン国際映画祭金熊賞、最優秀男優賞。かつて北野武が「その男凶暴につき」でデビューして以来の新鮮な映像表現と鮮烈なリアリティー。中国映画としては張芸謀の「赤いコーリャン」以来の歴史的名作。フィルムは富士でもコダックでもない中国製らしい。それが何よりの脅威か。 (★★★★★)
  • 母と暮らせば(15)
    山田洋次: 吉永小百合
    山田洋次の反戦映画はいつも戦闘シーンが一切出てきません。今回もそうです。くすんだ色調で市井の庶民の生活を丁寧に描きます。井上ひさしの「父と暮らせば」の立派なオマージュ。冒頭の原爆投下シーン、医大の授業中に教室が明るくなりインク壺が溶け、遅れて轟音と暗黒。キノコ雲を出さずに原爆を語る歴史的名シーンだと思います。 (★★★★)
  • スターリングラード(93)
    ヨゼフ・フィルスマイアー: トーマス・クレッチマン
    有名な2001年のアメリカ映画とは同名ですがかなり違います。あれはロシア軍から見たスターリングラード攻防戦。これはドイツ映画でドイツ軍から見た攻防戦。米映画よりリアル。投入されたドイツ軍26万人。生還したもの6千人。我が国のペリリュー島も硫黄島もはるかに上回る地獄の戦闘だったわけです。 (★★★)

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2005.07.02

31年ぶりに「砂の器」を見て

私がはじめて「砂の器」を観たのは、1974年ですから、実に31年前、私がまだ20歳代の半ばの頃である。
記憶にあるのは、気分が妙に晴れずにブルーであった31年前のその日、私は「映画でも観てみようか?」と、題名もろくに確認せずに、浅草六区の浅草松竹に入って観たのが、この「砂の器」である。

冒頭、深夜の国鉄蒲田操車場における死体発見シーンから、すっかり引き込まれてしまい、ラストまで時間を感じないほどのめり込んで観た記憶がある。観る前の期待値がゼロだっただけに、見終わっての感動はいわゆる「しばらく立ち上がれないほど」のもので、今でも個人としての映画生涯ベストテンを作ろうとすれば、悠々と上位に入る。

この'74「砂の器」を今回松竹が、イマジカと協働で我が国最先端の高品質なデジタル修復を実現し、'74当時の画像を見事に復元、音声も2チャンネルから5.1チャンネルドルビーへグレードアップしている。名付けて「デジタルリマスター版・砂の器」を、31年ぶりに東劇に見に行った。

まず、最初に驚かされたのは、偶然幸運に久しぶりに休暇が取れた平日の初回(10時開演)であったにもかかわらず、ほぼ9割の席が埋まっていたことである。今時の映画で、平日の初回がほぼ満席になる映画などあり得ないという常識を持っていた私だけに、本当にビックリさせられた。客層と言えば、おそらく定年後と思われる初老の紳士がかなり目立つ。これも今時の映画館の観客は、7割方がご婦人という常識を持つ私にとっては、二重にビックリさせられた。

31年ぶりに観た感想を次に列挙する。
1.やはり31年前は、青春まっただ中で、集中してみたこともあって、かなりのシーンをディテールまで記憶していた。(今は、先週観た映画でもプロットさえ忘れてしまうのはなぜだろう・・・)

2.今観ると、前半2/3は、意外なほど冗長である。しかし、難事件に対して、あらゆる可能性を検証しながら、今西刑事(丹波哲郎)と吉村刑事(森田健作)が、聞き込みを繰り返すわけで、やむを得ない展開である。
そして、この映画の神髄は、何と言っても後半1/3の本村千代吉(加藤嘉)とその子秀夫の親子の放浪シーンの過酷さと美しさ、加えて、警視庁捜査会議での丹波哲郎の捜査報告の名調子に尽きる。
前半2/3の冗長さが、一気にカタルシスに昇華する。たたみかける全体構成のすばらしさは、ひとえに脚本の橋本忍と山田洋次の功績である。
私は、31年前のサウンドトラックレコード(もちろんアナログレコード)を持っており、当時何度も聞いていたので、この丹波刑事の名調子は恥ずかしながら暗記しているほどである。
とりわけ好きなのは、捜査会議冒頭で「渋谷区穏田(おんでん)3の5和賀英了に逮捕状を請求します」と、低く抑えた声で渋く言い切るところである。
ところで、渋谷区には、穏田(おんでん)という町名はありません。きっと神南の語感を拝借したんでしょうね。

3.今回31年ぶりに観て、この映画の白眉だと再確認したシーンがある。
それは、あれほどまでに我が息子秀夫の成長した姿に再会したがっていた父親本浦千代吉(加藤嘉)と今西刑事(丹波哲郎)の岡山のハンセン病療養病棟での対面シーンである。成長した秀夫、すなわち栄光の絶頂にある天才音楽家和賀英了(加藤剛)の写真を今西刑事が千代吉に見せた時の加藤嘉の鬼気迫る演技のすばらしさ!セリフの間の見事なこと! 臓腑から絞り出すような言葉 「しらねぇ!こんなシト、オラ、しらねぇ!」 いやぁ~、すごい!完璧!

4.昨年放映されたTVの「砂の器」と比較してみますと、TVでは和賀英了を中居正広が演じたのはまぁいいとして、この本浦千代吉が、差別に耐えるハンセン病患者として放浪する加藤嘉から、村八分に激怒して村人を皆殺しにした犯人として放浪する原田芳雄に変えてしまったのは、いくら何でも設定に無理がありすぎでしたですよねぇ。

5.最後に、'74のキネマ旬報ベストテンでは、なんとこの「砂の器」は第2位でありました。第1位は、熊井啓の「サンダカン八番娼館望郷」だったんですネ。
毎度、映画の順位付けには難しいものがありますが、確かに良い勝負ではありますが、私には「砂の器」の明確な勝ちだと思いますけどねぇ・・・

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コメント

> ところで、渋谷区には、御田(おんでん)という町名はありません。きっと神南の語感を拝借したんでしょうね。

あったんですね、これが。
「穏田」と書きます。今の原宿のあたりです。
昔、水路の調査をしていて原宿という地名との落差に驚いた記憶があります。
http://www.harajuku.jp/sanpo/harajukustory/origin/origin.shtml

とつぱさん、毎度有益なご指摘感謝です。
いやぁ、これはまいりました。脱帽、土下座ものです。
何を隠そう、私は(前にも書きましたが)現在の渋谷タワーレコードのはす向かいの神南で生まれたにもかかわらず、大きな勘違いをしてしまいました。
そう言えば、祖父が穏田とよく言っていたような気もします。
場所としては、今で言えば、暗渠となっている渋谷川を原宿方向に進み表参道と交差する周辺の地域かなぁ?

映画「砂の器」は、映画は、小説とは別の、映画監督の作品であることを教えてくれた作品です。映画の印象がよかったので、さっそく松元清張の小説を買って読んだら、その印象の違いに驚きました。映画では、美しい風景の中の親子の放浪シーンを軸とした親子の絆の強さが一番印象に残ったのですが、小説では、謎解き、殺害方法など盛りだくさんで、印象が散漫でした。もっとも、これも30年近く前の印象で、僕の本の読み方が不十分だったのかもしれない。また、この映画は、子供のころから僕の慣れ親しんだ蒲田駅周辺が出てくるのでこれも印象の強さのひとつの原因かも知れません。

映画「砂の器」については、管理人さんのお言葉通りですね。日本映画の傑作の一つと申せましょう。四季の移ろいの中を放浪していく親子の映像が悲壮なまでの美しさを湛えているのに、小生、涙腺「ゆるみっぱなし」だった記憶があります。さて、既にご指摘の向きがある「渋谷区穏田」という地名ですが、これは今の渋谷区神宮前のことなんですね。昭和40年に、原宿と併せて現在の地名に変わったようですよ。松本清張の「昭和史発掘」にも登場する「穏田の行者」こと飯野吉三郎が住んでいたのがこの辺り。彼は、「穏田の神様」とか「日本のラスプーチン」とか言われた人物で、二〇三高地の陥落を予言したと言われております。政財界にも心酔者がいたと言いますから、いつの時代にも怪しげな人物を担ぐ連中がいるんですね。飯野は昭和19年没。また、葛飾北斎の傑作、「富岳三十六景」のうち「隠田の水車」という版画をご覧になったことはありませんか。この絵に描かれているように、江戸時代の穏田は、村の中央を流れる渋谷川に水車がかけられ、のどかな田園地帯が広がっていたんですね。以上、蛇足を加えました。

酢豆腐さん、いつもながらの蘊蓄、感謝です。
村の中央に渋谷川がチョロチョロ(きっとその程度の流量だと思いますが)流れているのどかな田園地帯だった江戸時代の穏田に行ってみたい気がしますネ。あっ?チョロチョロじゃ、水車は無理か・・・

神宮前という地名の前は、穩田だったり、竹下だったりしました。
オリンピックのころに地名変更になりました。

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» 「砂の器 デジタルリマスター」 美しい昭和の風景 [『パパ、だ〜いスキ』と言われたパパの映画日記]
泣ける映画が大好きな日本人。 最近では「ミリオンダラー・ベイビー」が、ラスト30分は泣きっぱなしで話題となっていますが、「ラスト30分」「泣き」「映画」で検索すると、なんと1700件もヒットします。 この日本映画の名作「砂の器」は、“ラスト30分泣きっぱなし”の元祖と言えるでしょう。 実際、映画館でも、加藤剛の「宿命」の演奏と丹波哲郎が捜査会議で語りだすと、皆さんスイッチが入ったようで、とにかく先に�... [続きを読む]

» 砂の器 [kazhik.movie]
東京で身元不明の男が殺される。手がかりは東北弁の「カメダ」のみ。しかし丹波哲郎と森田健作が演じる刑事は執念の捜査をつづけ、事件の真実に迫っていく。そこにあったのは犯人が心の底に封じ込めていた哀しい少年時代の記憶。 有名な作品だが、私は今回はじめて見た。前半は刑事たちによる謎ときの面白さに引き込まれ、後半は明らかになった犯人の過去の重さがズッシリとのしかかってきた。とくに老人が刑事に対して「そんな人知らねえ!�... [続きを読む]

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読んだぞ!リスト

  • 堀田 善衞: 時間 (岩波現代文庫)

    堀田 善衞: 時間 (岩波現代文庫)
    1936年から37年の南京事件を被害者の立場から描いた小説。「事実のけたはずれのすごみがかえって出来事をストーリー化のあたわぬものとして宙ずりにしてしまう」という逸見庸の解説が的確。ミクロの事実のディテールを克明に追うことによって、被害者の数ごときでは思い及ばぬ真実を読者に理解させる。 (★★★★★)

  • Henry Hazlitt(ヘンリー・ハズリット): 日経BPクラシックス 世界一シンプルな経済学

    Henry Hazlitt(ヘンリー・ハズリット): 日経BPクラシックス 世界一シンプルな経済学
    今売り出しのリベタリアンによる経済学の基本書です。いわば自由市場至上主義のおっそろしくわかりやすい入門書です。わかりやすすぎて読んでいると、眠くなります。昔、そういえばサミュエルソンの基本書を読むときも同様の眠さを感じました。睡眠導入書として一冊いかがでしょうか? (★★★)

  • 司馬 遼太郎: 関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)

    司馬 遼太郎: 関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)
    古今最大の戦闘となった天下分け目の決戦の過程を描かせたら司馬遼太郎の右に出る人はおりません。広大な関ヶ原を舞台に、これ以上ないような複雑な人間関係を生き生きと描写して最後まで一気に読ませます。しかし、私は今さらながら知ったのですが、関ヶ原の戦いって、ギリギリの好勝負だったんですねぇ。 (★★★★★)

  • 鈴木 大拙: 禅 (ちくま文庫)

    鈴木 大拙: 禅 (ちくま文庫)
    難解な禅の神髄そして悟りについて、平易に説得力をもって解説してくれる禅入門の名著。要するに「色即是空、空即是色」の世界を噛んで含んで丁寧に教えてくれる。世界の見え方が変わるほど理解できた気になるのは、大拙師のおかげか、はたまた訳者の工藤澄子氏のおかげなるや? (★★★★★)

  • 岸田 秀: ものぐさ精神分析 (中公文庫)

    岸田 秀: ものぐさ精神分析 (中公文庫)
    「人間は本能の壊れた動物である」から始まってフロイトもユングもぶっ飛ばして、人間存在の幻想性を鍵に、独自の「岸田唯幻論」を展開する。作者自身が自信なさそうで、こちらも今一つ乗り切れない。 (★★★)

  • 辺見 庸: 1★9★3★7(イクミナ)

    辺見 庸: 1★9★3★7(イクミナ)
    いつも戦争を被害者の目から見がちな我々だが、加害者の目から徹底的にリアルに掘り下げる逸見先生。1937年の南京事件を糸口に、現代の安保法制に渾身の怒りをぶつけ咆哮する。しかし、作者が激怒する昭和50年の昭和天皇の記者会見発言、ぬかったことに私は知りませんでした。戦後から現代に至る我が国の総無責任気質の根源はここにあったんですね。 (★★★★)

  • エマニュエル・トッド: 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)

    エマニュエル・トッド: 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
    最近珍しい元気のいいフランス人エマニュエル・トッドが、没落するフランスをほとんどドイツのせいにして悪態をつく。ドイツにとって、東西ドイツ統合もEU統合も千載一遇の濡れ手で粟であることを声高く主張するトッドさん。割り引かなければならないが、説得力あるよ。 (★★★★)

  • 司馬 遼太郎: 世に棲む日日 (文春文庫)

    司馬 遼太郎: 世に棲む日日 (文春文庫)
    どんな幕末オタクでも、苦手とするわかりにくい時期があります。蛤御門から薩長合同の時期の長州の実情です。久坂玄瑞をはじめ手当り次第で死んでいき、誰もがもはや長州は壊滅と確信した瞬間、鬼神とも雷神とも称される高杉晋作の奇跡的怒涛の進撃で情勢逆転。この様子がよくわかる司馬遼太郎の天才的作品です。 (★★★★★)

  • 百田 尚樹: 影法師 (講談社文庫)

    百田 尚樹: 影法師 (講談社文庫)
    本屋大賞作家百田尚樹の小説作法のよくわかる作品。あらかじめ伏線を思い切り撒いておいて、最後にかたっぱしから回収しまくる方式が、読み手としては快感。しかし「永遠の0」の時も思ったのですが、本作の彦四朗といい主人公の潔い高潔さと自己犠牲の姿勢はちょっと非現実と言ってはいけませんかねぇ。 (★★★)

  • 菊地 明: 新選組三番組長 斎藤一の生涯 (新人物文庫)

    菊地 明: 新選組三番組長 斎藤一の生涯 (新人物文庫)
    「寡黙で猟奇的な人切り」なのかはたまた「最後は警官と東京高師の事務官を勤め上げた謹厳実直の人」か?謎の新撰組隊士の全貌が見渡せる。読後、最大のサプライズは、斉藤の妻はなんと!山本八重に勝って会津藩の照姫の祐筆を射止めた高尾(貫地谷しほり)だったということです。 (★★★)

  • 佐野 眞一: 甘粕正彦 乱心の曠野

    佐野 眞一: 甘粕正彦 乱心の曠野
    著者独特の克明な調査を反映して大変な長編ルポルタージュになっており、部分的にディテールに入り込みすぎてわかりにくいところはあるものの、最終盤にかけてドラマチックでとってもおもしろい。甘粕憲兵大尉については吉田喜重の「エロス+虐殺」以来デモーニッシュなイメージが先行してしまいがちな我々の世代にとって、あっと驚く新事実続出で当時が決して異常な世相とは思えない気がしてくる。要するに今でも起こりうるという意味で・・・ (★★★★★)

  • 鹿島 圭介: 警察庁長官を撃った男

    鹿島 圭介: 警察庁長官を撃った男
    あの立花隆大先生が週刊誌で推薦している本。あまりに有名な'65年の国松孝次警察庁長官狙撃事件のノンフィクションルポ。立花先生が珍しく「真犯人はこの老人だ!」と興奮して断言する。著者はフリーのルポライターなれど、文章力弱く読みにくい。しかし、これが事実とすると当時の米村警視総監の責任は非常に重い。 (★★★★)

  • 北野 武: 超思考

    北野 武: 超思考
    私はこれまでのタケシ本をほとんど読んできましたし、読んで損はなかったケースがほとんどでした。今回も幻冬舎が満を持して出版したようですが、さすがに新鮮味が薄れてきました。タケシの少年期における母親の教育を何度か賛美しているが、これはたけちゃんらしくなくて、「タケシ!老いたり!」と思わせます。 (★★★)

  • 渡辺 淳一: 孤舟

    渡辺 淳一: 孤舟
    某一流広告会社をそこそこの役員で退職した高級サラリーマンの定年退職後を「失楽園」の渡辺淳一が意欲的に描いたはずだったのですが・・・この小説は全くひどいですねぇ。この主人公、とにかくウジウジした思いっきり情けないおっさんです。あの「失楽園」で過激に世間を挑発した同じ作者とは到底思えません。 (★)

  • 町田 康: 告白 (中公文庫)

    町田 康: 告白 (中公文庫)
    明治26年に実際に起きた大阪府南東部赤阪水分の11人斬殺事件を題材としたロックンローラーで作家の町田康の傑作。全編独特のロック調とも言うべき文体で、かつ河内音頭の熱と意気を感じさせる。事件後わずか1ヶ月で河内音頭として大ヒット。「男持つなら熊太郎弥五郎、十人殺して名を残す」と歌っている。 (★★★★)

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